「死刑評決」のあらすじと感想をまとめました!【大門剛明】

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今回紹介するのは大門剛明さんの「死刑評決」です。この本は1件の裁判員裁判を中心に物語が展開されていく社会派ミステリーで、人が人を裁く難しさを改めて考えさせられる小説になっています。次々に明らかになる衝撃の事実に、打ちのめされること間違いなしです。

本記事では大門剛明さんの「死刑評決」のあらすじと感想をまとめました。また、この本が好きな人におすすめの本も紹介します!

こんな人におすすめ!

  • ・社会派ミステリーが好きな人
  • ・考えさせられる小説が好きな人
  • ・法廷モノが好きな人
目次

本の概要

タイトル死刑評決
著者大門剛明
ページ数352ページ
発行年2019/12/13
出版社講談社

「死刑評決」は大門剛明さんの「完全無罪」の続編になっています。

前作を読んでいなくても、話の内容は十分理解できるためどちらから読んでも大丈夫です。ちなみに僕も「死刑評決」を先に読みました。

大門剛明さんはこの「完全無罪」シリーズ以外にも「雪冤」や「反撃のスイッチ」などの著書があり、特にデビュー作の「雪冤」は第29回横溝正史ミステリー大賞とテレビ東京賞をW受賞しています。

「死刑評決」のあらすじ

裁判員が殺人犯? 前代未聞法廷開幕!

裁判員裁判で死刑評決を受けた、犯行当時十九歳の死刑囚に死刑が執行される。

綾川冤罪裁判を闘った弁護士・松岡千紗が量刑不服として再審請求する矢先だった。

直後、死刑を支持した元裁判員が容疑者となる新たな殺人事件が勃発、千紗は敢然と法廷に立つ。

人が人を裁く難しさを問う迫真のミステリー。

講談社より引用

「死刑評決」の感想

事件の真相などは伏せていますが、ストーリー展開などのネタバレを含みます。気になる方はご注意ください。

何も語らなかった死刑囚

8年前アイドルのコンサートの会場になった広場で、紙袋が爆発し12歳の男の子が死亡、十数人の重軽傷者が発生する事件がありました。

テロなどの組織的な犯行も疑われたこの事件を引き起こしたのは当時19歳の小杉優心という少年です。優心は爆弾を自作し、それを入れた紙袋を置く姿を防犯カメラが捉えていました。

裁判ではその事件の凶悪性から死刑か無期懲役を争うことになります。しかし、優心は事件について何も語らず、自分の弁護士に対しても黙秘を貫き、事件の動機など一切不明でした。

その態度から反省の余地がないとして、一審で死刑判決が下り弁護士が上告しますが、優心本人がそれを取り下げたことで死刑が確定します。

この優心の知り合いが死刑判決に納得できず、主人公である松岡千紗に相談することで、物語は進みます。しかし、千紗が再審請求をしようとしていた矢先に死刑が執行されてしまいます。

この謎を追うだけでも、結構おもしろい小説を書けるのでは?と僕は思うのですが、大門剛明さんはさらにもう一つの事件を絡めてきます。それは一件の殺人事件でその容疑者はなんと優心の裁判に関わった元裁判員でした。

千紗がその弁護を勤めることになり、千紗は今起きている事件と8年前の事件の両方の真実を明らかにしようとします。なぜ優心は黙秘したままだったのか、事件の背景にどのようなことがあったのかなど驚くべき事実が次々に明らかになります。

公正な裁きと正義

裁判は公正なものであるというのは、僕たち一般人からしたら当たり前のように思います。しかし、本当に公正な裁判というのはどのようなものなのでしょうか?

それを「死刑評決」という小説は導入部分で早々に読者に投げかけてきます。

千紗は一件の裁判を担当しており、一審で死刑判決を受けていた被告を二審で無期懲役を勝ち取ります。しかし、それは千紗だけの力ではなく真山という凄腕の弁護士の力も借りて勝ち取ったものでした。

裁判では死刑の判決を下す傾向にある裁判官とそうでない裁判官が存在し、担当した弁護士の力量によっても量刑が左右される。千紗は裁判に関わる人によって死刑になるかならないかが決まってしまっていいのか、果たしてそれが公正な裁きといえるのだろうかと思い悩みます。

確かに千紗の言う通りでその考えは僕も理解できるのですが、では実際どうすればいいのかと言われると答えに困ります。

これに対する答えはないのかもしれませんが、だからといって仕方がないと割り切るのも何か違う気がしてモヤモヤしました。

また、死刑から無期懲役になった被告ですが、形だけの反省しかしておらず、その犯行も身勝手なものでした。それを知っている千紗は無期懲役が決まったときの遺族たちの姿を見て、これで良かったのだろうか、これが正義なのだろうかと疑念を抱きます。

ストーリーが始まってすぐにこのようなことを多く問いかけてきます。どれもすぐに答えがでるものではなく、そもそも答えがあるのかも分からない問題で、結局僕の頭では自分なりの答えを出すことさえできませんでした。

しかし、普通に生活していてはあまり注目していないところに目を向け、考えるきっかけを作ってくれた非常に良い小説だと思います。

人が人を裁く難しさ

「死刑評決」は人が人を裁く難しさを読者に問いかける小説です。

その中で僕が忘れられないやりとりがあります。それは裁判長が被告に対してどのような刑罰を与えるか迷っている裁判員に対してかけた言葉で、以下の通りです。

「事件で殺された被害者が、わが子だったとしたらとイメージしてください。自分を犠牲にしても生きていて欲しかったわが子。きっと身が引き裂かれるほど苦しいでしょう。次に法廷での被告人を思い浮かべてください。被告人に対し、どんな思いになるでしょう?どんな刑罰を与えますか

死刑評決p231より引用

僕は独身で子供もいませんが、親の心情を想像することは容易く誰しもが、死刑にしてやりたい、可能な限り重い刑罰を与えてやりたいと思う方が多いのではないでしょうか?被害者や残された遺族のことを考えれば考えるほど、その思いは強くなると思います。

ですが、裁判長のかけた言葉はこれで終わりではありません。以下の文章が続きます。

「さらにもう一つ、イメージを加えます。その被告人は冤罪であることが分かります。真犯人はあなたのもう一人の子どもでした

「その子もまたあなたが命をかけてもいいほど愛する存在です。あなたはどういう罰を与えますか?初めの被告人と同じように裁けますか?どちらも同じで変わらなかったらきっとそれは公正な裁きなのです……

死刑評決p232より引用

この文章を読んだときの衝撃は今も覚えています。裁判長は公正に人を裁くにあたって感情を持ち込んではいけないということを裁判員に伝えたかったのだと思います。

先程は僕も死刑などの重い刑罰を与えてやりたいと考えていました。しかし、もう一人の自分の子供に同じ様にできるかと言われると正直なところ僕にはできないと思います。

そして、それは裁判に感情を持ち込んでしまっている=公正な裁きを下すことができていないということで、人を裁く難しさを特に痛感した場面でした。

「死刑評決」では全編を通して人を裁く難しさを描いています。この本を読んで、もし、これからの人生において自分が裁判員として裁判に参加しないといけなくなったら、僕はその時正しい判断を下せるのかと考えさせられました。

「死刑評決」が好きな人におすすめの本

「13階段」 高野和明

10年前に夫婦が惨殺される事件があり、その現場の近くでバイク事故で倒れていた樹原亮が逮捕されます。

亮はバイク事故により事件前後の記憶を失っていましたが、状況証拠により死刑が確定しました。とある理由で三上純一はそんな亮の冤罪をはらそうとします。

「死刑評決」と同様に死刑がテーマのミステリーですが、こちらのほうがサスペンスの要素が強いと思います。ハラハラした展開が好きな人におすすめです。

「雪冤」 大門剛明

同じ合唱団に所属する2人を殺した罪で八木沼慎一は逮捕されます。

慎一は無罪を主張するも残念ながら死刑が確定してしまいます。15年後、死刑囚となった息子の冤罪をはらそうとする慎一の父の元にメロスと名乗る人物から自首したいと連絡があり、15年前の事件の謎が大きく動き始めます。

死刑と冤罪がテーマの大門剛明さんのデビュー作で、社会派ミステリーが好きな人にはたまらない一冊です。

まとめ

今回は大門剛明さんの「死刑評決」のあらすじと感想をまとめ、また、この本が好きな人におすすめの本も紹介しました。

死刑や公正な裁き、人が人を裁く難しさなど多くのことを読者に問いかけてくる小説で、考えさせられてばかりでした。全部で346ページと文庫では決して多くはないページ数であるはずが、読後感はそれ以上の大作を読んだような満足感がありました。

考えさせられる小説が好きな人や社会派ミステリーが好きな人には是非読んでほしい1冊です。

この記事を読んで皆さんが「死刑評決」を手に取って頂くきっかけになれば幸いです。

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